2024/1/7 第79回 杉並ロードレース



『さぁ、冷たい風に負けず楽しもうか。』


2024年最初のロードレースということで、1月7日に杉並区で開催される杉並ロードレースに参加することにした。
当初は10kmの部に参加したいと思っていたが、その日は午後から予定があったので今回は5kmの部(距離は5.12km)に参加する運びとなった。
優勝すると金メダルが頂戴できるという粋な大会でもあり、主催者も杉並区陸上競技協会のため、ファンランと言うよりは競技志向のレースとなる。


起床後に空を確認すると、ちょうど漆黒の空の彼方が薄く明るくなりつつあった。
少し赤み掛かっているので天気は心配は無さそうだ。
風は少しありそうだが、河川敷でもないので問題とはならないだろう。
朝食に軽くリンゴを食べ、走る前のルーティーンをこなす。
会場までは車で1時間と少しあり、向こうについてからできることと言えばアップ位なものなので、やや入念に身体を伸ばしておく。
10日程前に10,000mをヴェイパーフライ3で走っていた疲れが未だ抜けていなかったが、まずまず良く眠れたため、コンディションは8割前後言ったところで悪くはない。
その後も練習は順調に詰めていたので、前回のリザルトのタイムを見る限りでは先頭集団でレースを運べる自信はあった。


家を出て車へ。
ドライバーズシートに乗り込み一般道を2、30km程走る。
途中、主だった渋滞などもなく想定よりも10分程早く会場付近へと到着することができたが、降りた瞬間に身震いすることが起こった。
風が非常に冷たく、それなりに吹いているのだ。
タンクトップで走るものだから、これは堪らない。
直前までウィンドブレーカーを着続けるしか無さそうだ。
ガタガタと震え出しそうな肩を抑えつつ、車を後にした。


会場は杉並区の善福寺公園付近の閑静な住宅街の一角。
車をコインパーキングに預けてからコースを確認するとやや高低差があるようだ。
また、簡易に説明すると長方形の周回コース(4周)であるのだが、スタート(長方形の長い線の真ん中辺り)から最初のコーナーまでが上りであり、そのコーナーを曲がった後も暫く上りが続くと言うものだった。
下りは最終コーナーを曲がった後に一気に駆け降りる形だ。
高低差は13m程と大きくはないが、周回となると50m以上上ることにもなる。
これは少し想定を外れていたが、最近はジョグで積極的に上りを走るようにしているため、大きな問題にはならないだろう。


スタート地点前の本部付近と5分程離れた場所にあるコインパーキングを往復しているうちに、集合時間が近づいてきていた。
スタートの20分前と想定よりも集合時間が早かったこともあるが、他のこと(今回の場合はコースの攻略の仕方を考えることと下見)に集中していると時間が過ぎるのは早いものである。
車に戻って携帯電話など不要な物を置いてこないといけないのだが、置いてくるとアップをしている時間が無さそうだ。
ただ置いてこない訳にもいかないので一旦車に戻り、車から会場までの道を軽く走りながらアップ代わりにすることした。


大会本部へ到着すると既に5kmの部に出場する選手は招集が始まっているようだった。
そのため、足早にスタッフの元へと向かう。
もう少し時間があるかと思っていたが、どうやらそうでもないようだ。
アップが足りなかった分はレース序盤でカバーしよう。
そんな風に考えながら招集の際のコールを受けると、未だ温まっていない肩を抱きつつ他の選手とともにスタートラインの方へと歩いて行った。


スタート位置からナンバーカード順に整列が始まる。
女性が前、男性だ。
これは男性が後ろから一気に抜いて行くことになるので危ないのではないかと思ったが、大会規定なので仕方ないだろう。
出走確定人数が68人とあって整列はスムーズに済んだが、スタート時間までは20分弱ある。


寒い。


北寄りの風故に冷たく、更に建物間の隙間風のため風が収束して強く感じる。
コースの外側が比較的空くだろうから、そこから一気に抜いて行くことにしよう。
レースプランについては未だコースの全景を見ていないため何とも言えないが、前回のリザルトを見る限りでは5km部優勝者の林 和希さんをマークしつつ、先頭集団で或る程度進めるのが良さそうだと思える。
そんなことを考えながら気を紛らわそうとしたが、身体は刻一刻と冷えて行く。
せめてアームウォーマー位は持って来るべきだったか。
震える腕や肩を摩って熱を身体に感じさせながら身を持たせていると、スタート時刻が迫って来る。
安堵とともに途切れそうな集中力を号砲に向けて研ぎ澄ます。


やや静まり返った空気の中、スタートの号令が掛かった。
それとともにランナーが駆け出す。

『さぁ、冷たい風に負けず楽しもうか。』

心の中で呟いた後、私も一歩足を前へと進める。
想定よりも前の走者を抜かすのにやや手間取ったが、先頭の後ろ位に着くことができた。
まずは一周、様子見と行こう。
上り坂から続く最初のコーナーを抜け、やや上方に傾斜が続く道を軽やかに足を進めた。


最終コーナーを曲がるとやや傾斜の深い下り坂があり、スタート地点へと戻って来る。
これで一周だ。
そう考えると上りの方が区間が長いし、勝負を掛けるなら短い下り区間でのスプリントよりも、平地区間からスピードを上げてロングスパートで突き放す方が勝機はありそうに思える。
元々スプリントよりもロングスパートの方が得意でもあるし、 1,000m3本を同じスピードで走る練習や5,000mでラスト2,000mを上げる練習がここで役に立ちそうだ。
3周目までは先頭集団に身を潜め、4周目のバックストレートに入った瞬間から一気にスピードを上げていこう。
距離にして800m前後なので問題無さそうだ。


先頭集団のペースも3:30-35の間で進んでいるため余裕もあったので、上記の即席プランに則り、いつも通り落ち着いてレースを進めた。
マークしていた前回優勝者の林さんを含む3人の先頭集団が4周目に入る。
もう1人の選手はノーマークだったが、このペースで比較的余裕もありそうなので実力者なのだろう。
3周目辺りで少し前に出て揺さぶったりはしてみたが、2人とも冷静に対応していたので未だ余裕もありそうに思える。
更に林さんの足元を見るとアルファフライ2を着用していた。
林さんは長身で足も長かったので、ラストの下り坂でのスプリント勝負となると彼の方に大きなアドバンテージがありそうだ。
やはりプラン通りのロングスパートが勝ちへの最短ルートだろう。


最初のコーナーを曲がる。
ここで僅かに空いた先頭の真後ろにポジションを移す。
準備は整った。
未だ余裕もある。
セカンドコーナーを曲がったら一気に上げて行こう。


曲がり角に差し掛かり、やや外側に膨らむ。
前の選手を外側からかわすためだ。
直線に入り先頭の斜め後ろに着く。
それと同時に一気に心肺のギアと足の回転数を上げて先頭に並ぶと、振り返らずに猛然とスパートを仕掛けた。


100m程度進んだだろうか。
足音が段々と遠去かって行く。
このまま行けそうだ。
サードコーナーに差し掛かる頃には後ろの足音はもう聞こえなくなっていた。
2、30mは離れただろうか。
時計は見ていないため正確なところは分からないが、3分1桁台位には上がっていると思う。
ただ未だこのペースで押していけそうな感覚はあったため、そのまま肩甲骨をぐるぐると回し続ける。


最終コーナーが近付いてきた。
ここをクリアすれば一気に下ってゴールだ。
ラストは林さんに多少詰められる可能性はあるものの、足音が聞こえない位の距離ならばパスされることはないだろう。
荒くなってきた呼吸に耐えながら視線を遠方へと移すと、右前方にゴールテープが確認できた。
勝利を確信し、サングラスを額に上げる。
最後は両手を上げてゴールテープに駆け込んだ。
手元の時計を止めると17:32。
ネットタイムなので、後方からスタートしたためグロスタイムはこれより数秒は遅いだろう。
コースと風を考えるとタイムとしてはまずまずだが、目標どおりの部門別優勝だけならず総合でも優勝できたのは良かったと思う。


レース後、8〜9秒差で2位でゴールした同じ40台の林さんと握手をして健闘を称え合った。
その後、ともに先頭集団を走り、僅差の3位でゴールした高橋さんとも挨拶をさせてもらった。
林さんにはフォームについても良いコメントをいただいたので嬉しく思う。
フォームには拘りがあるので、前回の埼玉でのハーフマラソンに続き、実力のあるランナーに自分のフォームについて称賛いただけたのは私にとって喜ばしいことだ。
この後、レースやコースについて少し会話を交わし、その場を後にした。


なお、レース後にはメダルおよび賞状をいただけるとのことだったため大会本部へと足を運んだが、運営側の通信系のトラブルにより賞状が印刷できなかったため、私の方も午後の予定に遅れる訳にもいかないので後日郵送していただくことにして会場を去った。


後日郵送いただいた優勝メダルと賞状はこちら。


メダルを拡大してお見せしたい。


ランナーが並んで走っている陸上競技協会主催らしいメダルだ。

裏面については下の写真のとおりだ。


【優勝】の二文字が大きく、眩く感じる。

さて、次は24/1/28に実施される第44回 館山若潮マラソンの10kmの部に出走する予定だ。
こちらでも部門別で3位以内に入賞すればメダルを頂戴できることもあり、そこを狙ってしっかりと練習を積んで、本番はレースを楽しみたいと思う。
メダルの色には拘りはないので、3位以内に入ることが目標だ。

最後に、家族を始め今回も応援してくれた全ての人に感謝し、筆を置きたいと思う。

ありがとうございました。