2024/3/24 第30回 上里町乾武マラソン



『もしかしたら最後になるかもしれないレースだ。出し切って行こう。』

今年は初冬から低温が続いた冬もようやくと終わりが近付き、春の風が感じられ始めた3月下旬、埼玉県上里町へと赴いた。
ほぼ訪れたことのない土地だったこと、比較的平坦で走り易いコースであること、年代別でも6位まで表彰いただけるなど、条件が良さそうなので出走することに決めた形だ。

当初は軽井沢のハーフマラソンに向けた調整も兼ねた形を考えていたが、先月に石岡のハーフマラソンを快走した後から身体の状態が思わしくなかったこともあり、1週間程前に3月末〜4月上旬は2週間程の休養を取ることにした。
従って、このレースが休養前のラストレースになる。
ただ、休養しても身体のコンディションが以前のように戻る保証はない。
個人的に、自身の走力に或る程度納得できる状態でない限りはロードレースを出走する気は無いので、最後のレースになる可能性もあった。

レース当日、起床後に空を見渡すと広く広がる霞のような薄い雲の隙間から、パステルブルーの空が所々その淡い色を見せてくれる。
風も強くなく、やや気温は上がりそうではあるが悪い条件ではなさそうだった。
軽い朝食を食べた後、ストレッチや筋肉への刺激入れなどのルーティーンなどを一通りこなし、自家用車で家を後にした。

自宅から会場迄の所要時間は1時間半強だろうか。
圏央自動車道と関越自動車道を乗り継ぎ、最寄となる上里SA(ETC専用出口)へと向かう。
日曜日ではあったが主だった渋滞に遭うこともなく、スムーズに指定された駐車場へと辿り着くことができた。
近くの道端に咲いていた菜の花が綺麗だったので1枚。


駐車場は上里町立賀美小学校という学校の校庭で、大会本部が併設された会場へはシャトルバスが出ていた。
車を止めた時に丁度バスも待機中だったので利用しても良かったが、心地良い陽気でもあり歩いたこともない街だったので、アップも兼ねて軽いジョグをしながら向かうことにした。
距離も1km少しのため、身体を温めるには丁度良いだろう。
途中、赤城山方面や榛名山方面の山々が見えたため、足を止めてシャッターを切ってみた。

こちらが赤城山方面。

こちらが榛名山方面だ。

しっかりと雪化粧をした浅間山も見ることができた。


ここ数年、いやひょっとしたらここ10年単位でも、4月が迫ろうというこの時期にこれ程しっかりと雪が残っていることはなかったかもしれない。

のんびりと景色を楽しみながら小走りをしていると、会場である神保原小学校の校舎が視界に入ってきた。
既に多くの人が集まっており、5kmの部もあと少しでスタートするようだ。
軽く汗も感じ始めてきたし、全身の血の巡りも良くなってきた頃なので、タイミングとしては良い頃合いに来られたと言って良いだろう。

ちなみにこちらがスタート地点のアーチゲート。

とてもカラフルで元気が出る色合いだ。

ウォームアップが可能なエリアで軽くウインドスプリントを何本かした後に、荷物を預けて会場を見て回る。
そうしている内に自分が出走する10kmの部のスタート時間も近付いてきた。
今回のターゲットについては、前回の横浜のパークレース終了時点では33:30〜34:30辺りで3位以内入賞を考えていたものの、明らかに本調子ではないこともあり、34:30〜45位、1kmあたりだと3分20秒台後半で巡行する位が丁度良いだろう。
過去のレース結果を数年分参照すると、このタイムでも3位以内には十分入れるため3位以内に入りメダルを持ち帰りたいが、最低限入賞圏内(6位以内)には入っておきたいところだ。
そんなことを考えて少し気合を入れていると、時刻はスタート時刻の10分前に差し掛かる。
いよいよだ。
ワクワク感も高まってきた。

号砲の数分前になり、スタート地点へと赴くと中々の人数が集まっていた。
ざっと数百人は居そうな感じだ。
ただ、申告タイム毎のエリア分けは行っていないため、道路脇から前の方へと歩いて行き、スタートラインから4、5列目の所にポジションを構えることにする。
前方を見るとゲストランナーとして上武大学所属の陸上長距離選手が紹介されていた。
彼がトップでゴールテープを切るのは大方間違いないだろう。
周囲を見渡してみると、隣に良い走りをしそうな雰囲気の女性ランナーの方が居たので、軽く言葉を交わす。
お互いにこのレースに出走するのは初めてだったので、健闘を祈りあった。
運営からスタート1分前の声が飛ぶと、辺りは少しずつ静まり返って行った。

パンッ!

乾いた音が空に鳴り響く。
競走開始の合図だ。
まずは様子見ということで3:20秒台半ば程度で入ろうと思ったが、割と周囲のペースが速いこと、また自分の方も身体の動きがそこそこ良いこともあり、このペースに乗ってみることにした。
3分10秒台後半だろうか。
入りの1kmにしては速いペースだが、比較的規模の大きなロードレースの場合、参加者の皆さんはこのレースのためにという方が多く気合が入っているので、入りの1、2kmは割とオーバーペース気味で入る選手が多い。
今日もそんな風な印象を受けた。
自分はと言うと、前回のレース終了時には33:30〜34:30辺りを考えていたものの、明らかに本調子ではないこともあり、34:30〜45位、1kmあたりだと3分20秒台後半で巡行する位が丁度良いだろうと考えていたので、1kmを過ぎた辺りからは少し落として行こうと思っていた。

最初の1kmは3:16。
かなり速いペースだ。
想定通りこの前後から遅れて行く選手が続出してくる。
先頭はまだ見えている位置にいるが、このままでは明らかに自分もオーバーペースになってしまうだろう。
と言うことでペースを落としてみることにした。
と言っても落とし過ぎでもいけないので、3分20秒台半ば位を意識して、巡行体制に入る。
前に1人選手が見える。
同じ位のペースで走っていると見受けられるので、ここは1つ後ろに付かせていただこうか。
と思い少しだけピッチを早めて加速して、前の選手の後ろに付いた。
その途中で1人選手を追い抜いたが、彼は私の後ろに付いたため、集団は2人から3人になった。

1.5km辺りから6.5km辺りの区間はほぼ川沿いを走るコースになる。
春先なので菜の花も綺麗だ。
2km手前に土手の道へ至るために少しだけ上りがあること、4km地点前後数百メートルの忍保パブリック公園の区間を除くとほぼ真っ直ぐで平坦のため走り易い。
土手道なので狭いと言えば狭いとも言えるが、交通規制がされているためランナーしか居ないので、中小規模のレースの中ではやはり走り易い方だろう。
ペースはと言うと、1kmを過ぎてからは3:20台半ば〜3:30の間で巡行しており、前の選手のペースが安定していることも手伝って、周囲の景色を楽しむ余裕も割とあった。
集団はと言うと変わらず3人。
私の後ろの選手が時折遅れて行き2人になりそうになるも、その度に気を吐いて追い付いて3人に戻る。
それを繰り返しながら5kmを通過した。

5kmの通過は17:11。
1kmあたりの平均に直すと3:26/kmだが、最初の1kmにより底上げされていることを考えると、直近ではやや落ち気味になっているかもしれない。
そこで直近の1kmを見てみると、3:30ジャストだった。
想定通りややペースが遅れてきている。
前の選手も若干ではあるが、スピードが緩やかになってきているようにも思えた。
このままペースが落ちて行くようではよろしくない。
あと数100メートル様子を見て、ペースが上がってこないようならば自分が前に出よう。
そう決めて、様子を伺いながら足を回転させ続けた。

200m程の距離が過ぎただろうか。
前方に目をやるともう1人のランナーが見えた。
順位の程は分からないが、1桁台であることは間違いなさそうだ。
ゴール迄は残り5km弱。
少しずつ詰めて行けばゴール手前で追い付けるかもしれない。
となるとこのまま遅れて行く訳にもいかないだろう。
ペースを上げよう。
やや鋭い加速をして前の選手を抜くと、無理に差を広げようとはせず、先程よりやや速いペースで巡行するように走る。
目的が勝負を仕掛けて離すことではなく、集団のペースを上げることだったためだ。
当然、先程迄集団を引っ張っていた選手も後ろに付く。
3人目の選手も何とか付こうと気を吐いているのが聞こえたが、足音は少しずつ遅れて行った。

そのまま土手の道を更に数100メートル進み、6km地点に差し掛かる。
この1kmは3:32。
5kmを過ぎてからのこの1kmの前半部分が想定以上に掛かっていたようだ。
ただ、無理にペースを上げてラストが持たないようでも格好悪いだろう。
ならば今、3:20台半ば程度まで上げて順行しているのだから、暫くはこのまま行き、ラスト1kmで上げられるところまで上げるのが望ましい。
未だ比較的余裕もあるため、プラン通りに落ち着いて足を進めて行った。

6.5km過ぎからは河原に別れを告げて街中へと戻って行く。
この頃には先程まで後ろに付いていた選手も少しずつ遅れ、差ができ始めていた。
文字通りの単独走だ。
とは言うものの、少し前に確認した前方遠くを走っていた選手の背中が段々と大きくなってきている。
行けるかもしれない。
1km毎にラップを確認する。
6-7kmは3:26、7-8kmは3:27。
良いペースで来ているが、少し苦しくなりつつもあった。
3月は全体的にコンディションを崩していて横浜のハーフマラソン以降は距離走も大凡13kmを1本しかできていない。
この練習不足感がスピード持久力という点で重くのし掛かってきた。

9kmを通過、この1kmは3:30とやや遅れた。
が、意図的にスピードを落とした部分もある。
前を走っていた選手が目前に迫ってきたため、ラストで勝負するために力を溜めることにしたからだ。
彼は1度も後ろを振り返っていないため、こちらに気付いていない可能性がある。
ならば得意のロングスパートを掛けて一気に抜き去りそのまま押し切れば、勝てるかもしれないからだ。
終盤のため苦しくはなってきたが、もう1段上げられる余裕も未だあった。
残りの距離は600m程。
コースはほぼ直前だ。

『もしかしたら最後になるかもしれないレースだ。出し切って行こう。』

1月の杉並区ロードレースの時を思い出し、一気にペースを上げる。
恐らく1kmにして3:10前後だろう。
数秒〜10秒程度で前の選手に並ぶと、横を振り向くことはせず、そのままのスピードで抜き去って行く。
少しの間、後ろから足音が聞こえた気がしたが、いつもながら振り向くことはしない。
流石にここへ来てこのスピードに上げるのはかなり大変だったが、そのまま逃げ切ってゴールテープを駆け抜けた。
記録は34:22。
前半も後半も17:11ぴったりという珍しいレースとなった。
順位は年代別で5位入賞、総合6位という結果で、40台の選手が総合上位6人中5人と、中年ランナーが頑張った形となったためメダルに獲得には至らなかったものの、6レース連続で入賞して表彰状を頂戴できることとなり、良かったと思う。

レース後、途中の区間で3人で走っていた時の選手達と少し話をした。
うち1人、引っ張ってくれていた選手は40台でだった。
彼も年代別で6位に入賞したため、走り終わった後には解散したものの、表彰式を待つ間に再び顔を合わせて少し談笑した。
地元のランナーだったようだ。
ちなみに上武大学の選手も含めた総合タイムで1番になったのは40台の順位でも1位で優勝した大関選手。
スバルに所属していた元実業団の選手で、1度多摩川のレースで一緒に走ったことがあるが、その時と同様に圧巻の速さだった。(ゲストランナーを挟み、2位の選手も31分台という素晴らしい記録)
これ程の選手相手ならば敵うこともないため、メダルは獲得できなかったものの晴れやかな気分でもあった。
風景も楽しめたし入賞の副賞であるイチゴも美味しそうだし、総じて楽しいレースだったと思う。
スタッフの方に、表彰状とともに記念に1枚撮影していただいたので残しておきたい。

こちらは表彰状と副賞で戴いたイチゴだ。


さて、次のレースの予定は2024年5月19日に長野県軽井沢町で開催される軽井沢ハーフマラソン 2024。
エントリーしたのはもちろんハーフマラソンの部だ。
順位は40台男子部門にて3位以内を目標に快走したいと思うが、ハイレベルなレースとなるため前回同様の4位や5位位に甘んじてしまう可能性もある。
また、休養明けでコンディションを何処まで上げられるかも分からない。
その辺りの含めて未知のレースになることが想定されるけれども、今迄と同じようにワクワクしながら楽しんで快走したいと思う。

最後に、家族を始め今回も応援してくれた全ての人に感謝し、筆を置きたいと思う。

ありがとうございました。