2024/6/9 美瑛ヘルシーマラソン 2024



『何もこんな美味しい時間帯に走ることはないよな、撮影に行きたいぞ。』


まだ大雪山や十勝岳連峰にも雪が多く残る6月上旬、北海道の美瑛町を訪れた。


今回の旅の主目的は美瑛ヘルシーマラソン 2024に出走すること、および初夏の美瑛や上富良野の風景をカメラに収めること。
ただ、記事のタイトルのとおりこちらでは主にロードレースについてお話ししようと思うので、風景写真については各ストックフォトサイト上などでご覧いただければと思う。
ちなみに今回の旅は風景写真家の友人、O氏が旅仲間として同行してくれたことを付け加えておきたい。


さて、まずはレース前日に遡って話を続けようと思う。


前日は撮影のため午前3時に起床。
レース当日の朝は天候が怪しいので、夜明けの風景を見たり撮影したいと思ったので、前日は所謂【朝活】をしてみることにした。
カーテンを少し開けて窓の外を見ると未だ青が濃い空に薄い雲が広がっていたが、太陽の光を遮る程ではなかった。
これは幻想的な風景が見られそうだ。
宿泊地は上富良野であったため、着替えてカメラを手にし、上富良野周辺の丘へと足を運んでみることにした。


丘の上から北東方面に目を向けると大雪山のやや右の方から、ちょうど朝日が昇る頃だった。
もう少し経った辺りが1番良さそうだ。
周囲を見回し、前景として適している場所が無いかを歩いて探すこと10分程。
なだらかな小麦畑が遠方に向かって広がって行く場所を見つけたのでそこで1枚。


今回の撮影で最も良い1枚だったと思う。


この後は1度ホテルに戻って2〜3時間少々仮眠を取った後、再び旭川〜美瑛・上富良野の風景の撮影へと出掛けた。


途中、ロードレース前日の身体解しと言うことで、上富良野の十勝岳温泉へ。
凌雲閣が唯一日帰り温泉としても営業しているとのことなので、行ってみることにした。
北海道には2007年からかれこれ毎年、17年続けて来訪しているが(年によっては2、3回来ることもある)、十勝岳温泉に浸かるのは実は初めてのことだ。
こちらが湯元 凌雲閣の外観。


宿泊施設を伴っているだけあって館内は広く、温泉も内湯と露天風呂がある贅沢な造りとなっていた。
完全の泉質は鉄分が強い茶褐色の湯で、温度もちょうど良かった。
休憩室も写真のとおり広めとなっている。
これならゆっくりと寛げそうだ。


その後は十勝岳望岳台から白金温泉郷を経て一旦美瑛の市街地へ戻り昼食を取ることに。
この辺りに来る時はよく訪れるこぐまラーメンへと足を運んだ。


醤油ラーメン。
旭川(と言ってもここはやや南だが)らしさがありつつも、脂分は少し少なめで食べ易く美味しいラーメンだ。


お腹を満たした後は午後も丘の風景の観賞および撮影に赴き、最終的には16時頃まで走り回っていたと思う。
そこからホテルで身体を休め、近くのスーパマーケットで軽い夕食を購入、21時過ぎに就寝することにした。(ちなみにO氏は星空の撮影に赴いていたが、22時前に帰ってきたとのことだ)


当日の起床は5時過ぎ。
ハーフマラソンのスタート時刻が10時のため比較的ゆっくりと朝だったと思う。
朝食は果物少々と焼き饅頭を1つ。
そこに鉄分を多く含んだスムージーの紙パックドリンクを加えた。


スタート地点へ到着したのは9:00頃。
そこからはO氏に車を預けてゴール地点付近で後ほど合流することに。
私は走ることで美瑛の街へ至り、O氏は風景の撮影をしながらゴール予定時刻を目処に美瑛の街へと移動する流れだ。
スタート時刻は10:00。
それまでは時間があったので、9:30を目処にスタート地点へ移動、事前に前回優勝者の三宅選手に会うことができたので、声を掛け話をさせてもらった。
東北地方出身で現在は仕事で十勝の方に在住、昨年に初めてこちらのロードレースに出走したとのことだ。
初出場で初優勝と言うのも素晴らしいことだが、何より後半に上りが続くこのコースを初見で攻略して優勝したと言うことが価値があると思うし、尊敬に値する。
自分はどこまでやれるか分からないが、昨年も今年同様に好天で暑さに苦しめられ後半ペースが落ちてしまったとのことから、少なくとも10km付近の【心臓破りの坂】と呼ばれる急坂を上り切った時点でも、或る程度の余力を残して臨む必要がありそうだ。
経験者からの情報提供は実に有難いものだ。


三宅選手と談笑を続けていると、周囲に影が色濃く浮かび上がってきた。
どうやら太陽が雲間から顔を出したようだ。
空を見上げると、曇りの予報だったが所々青空を望むことができ、段々とその空間は広がりを見せてきていた。
これはここから気温の上昇も想定できるし、後半はそれが加速するだろう。
更に5km地点位からはコース上に日陰が無くなり、ほぼ完全に日向となる。
厳しいコンディションになりそうだった。


腕時計に目を落とすと9:55。
もう直ぐレースが始まる。
周囲を見回すと、段々と緊張感のある面持ちをした選手が増えてきた。
このレースのために1年間練習してきた選手、練習の一環で走る選手、次のレースの調整を目的として走る選手、旅のついでに走る選手など、色々と居るだろう。
こうしたことを想像していると、ワクワクが高まって来る。
これもまた、私がレースを楽しいと感じる点の1つだ。
スタート時刻に近付くに連れ、辺りは段々と静まり返っていった。


パーン!


号砲とともに前方のランナー達が駆け出して行く。
自分は3、4列目辺りに居たのだが、まずは10番手辺りを目処に行こうと考え周りより少し速いペースに上げて集団を抜け出すことを試みた。
隣で談笑していた三宅選手はと言うと、あっという間に先頭の方へ向かって行く。
この辺りは流石、前回の優勝者だ。
着いて行くのも面白かったが、未だ100%で走れるコンディションとも思えないため、軽井沢の時と同様にパルスをチェックしながら自分のペースで行くことにした。


1kmの通過は3分1桁。
5km辺り迄は下り基調かつスタートダッシュで上げたのでこんなところだろう。
予定通り順位も10番前後で来ているし、前に数人のランナーも見える。
5km迄は3:20前後で刻んで行き、そこから10km前後の急坂迄3:20台で行ってみるとしよう。
最初の1kmの感じでは行けそうな感覚があった。


スタート時よりも雲が無くなり、路面も日陰と日向の境がクッキリとしてくる。
北海道とは言え15年前と比べると夏場はかなり暑くなっているので、陽射しの影響を侮ることはできない。
そのため、できる限り道路の左側の日陰になっている部分を走ることにした。
コースはほぼ長い直線一本のため、コース取りはほぼ気にする必要もない。


4km地点から数百メートル先の交差点を左に舵を取り、そこから100m強でもう1度右に曲がると5km地点。
通過タイムは16:30ちょうどだった。
この間に2、3人のランナーの横を通過。
順位は6、7位と言ったところだろうか。
ここから9km地点迄は長い直線が続く。
20〜30m先には2人のランナーの背中が見えた。
段々と近づいて来ているのは肌感覚で分かっていたので、9km地点迄には彼らも捉えられるだろう。
パルスを確認すると170前後、呼吸の面でも余裕はある。
このまま行こう。


前を行く2人の選手に8km地点付近で並び、そこまま横から通り去る。
そのままおおよそ9km地点の交差点を左折して500m程進み右に直角に曲がったら、いよいよ心臓破りの坂と呼ばれている急坂に差し掛かる。
おおよそ10kmの地点。
タイムも33分台で通過、中々良い感じだ。
下り基調ともあり比較的速めのペースでも体力は温存できているため余裕もある。
9km地点ではやや遠くに見えていたもう1人の選手にも、この10km地点で追い付くことができた。
ここはあまり落とさず、かと言って後半に無理のない範囲で行くことにする。
想定通り前の選手はこの上りでペースを落としたので、横を通過する。
前はと言うと選手の姿は今のところ見えない。
恐らく今は3位か4位辺りだろう。
ここまでは予め思い描いた通りのレース展開で進められてきている。
坂を上り切った所に応援のスタッフと思しき方が沿道に控えていたため、
「ヘーイ!」
とこちらから声を掛けるとともに軽やかにハイタッチをして隣を駆け抜けた。


11km地点を左に折れるとそこから先はなだらかなアップダウンが続く丘陵地隊を進む。
アップダウンと言っても15km地点手前迄はほぼ緩やかな上りが基調で、下りになるのはほぼ終盤だ。
10km地点では見えなかった前のランナーがこの辺りに来るとまた見え始めて来た。
パルスをチェックしながら高くても170台前半に収まるように傾斜を上る。
12km地点付近の千代田の丘キャンプ場の交差点を左に曲がり、再び上りに。
この辺りは景色がとても良く、走っていてとても気持ちが良かった。


『何もこんな美味しい時間帯に走ることはないよな、撮影に行きたいぞ。』


等と考えてしまう程だ。
そんなことを想いつつ風景を楽しみつつ快調に足を進めていると、前を走る選手の背中がみるみる内に近付いて来た。
流石に上り続きで呼吸系に少し疲労を感じてきたものの、これはいけそうだ。
一気にスピードを上げる必要もなさそうなので、カーブを右に曲がってから緩やかになった傾斜を利用して少しだけスピードを上げる。
横に並んだ。
様子を伺ってみるとかなり呼吸が荒かったので、そのまま並走はせずに一気に抜き去ることにした。
13km地点付近のT字路を右に切ってから暫くの間聞こえていた足音は、段々と聞こえなくなっていった。


14km付近の上りが一連の上り部分の最後となり、ここから先はやや下りに近い平坦な道になる。
15kmを通過を過ぎると三愛の丘公園付近に最後の給水所がある。
ちなみに15kmの通過は52:31、この5kmは18:37と1kmあたりの平均で3:43も掛かってしまったが、この区間はほぼ上りだったので仕方ないだろう。
それに、限界近くまで攻めていないということもある。
そのため5km近くほぼ上りが続いたにも関わらず未だ余裕もあった。
しかし一方で別の問題が1つ襲い掛かって来ていた。


それは、トイレ(小)に行きたいということである。


未だ暫くは大丈夫ではあるのだが、陽射しがあって暑かったとは言えここで水分を取るのは得策とも思えない。
16kmを過ぎると残りは5km、所要時間にして20分弱。
我慢できない距離ではない。
三愛の丘付近の給水所で、
「お水どうそー!」
と声を掛けられたが、
「トイレ行きたいので大丈夫でーす! ありがとうございます!!」
と答えて丁重にお断りをし、そのまま走り続けた。


ここから先は完全に単独走。
前にも選手は見えないし、後ろからも追って来る気配は感じられない。
ロードレース中に後ろは一切見ないタイプのため静かに迫って来ている可能性は捨て切れないが、それならそれで終盤にロングスパートで勝負をするまでだ。


17kmを超えて交差点を右折し、18km地点前後に最後の急坂を上る。
その後左に曲がると視界が開けるのだが、遠方の長い直線に1人選手の姿が見えた。
既に3、4位であろうことは間違いは無さそうなので、あの選手は1位か2位だろう。
三宅選手ではなさそうなので、2番手だろうか。
何れにせよ残りの区間と自分と彼との距離を考察すると追い付くことは難しいだろう。
ここは確実に失速しないよう、かつ多少の余裕を保ちつつゴールを目指すことにしよう。
そう決め、急坂を下って19km地点を通過した。


20km地点を過ぎると美瑛川を渡る丸山橋へと至る。
ここを過ぎればゴールの丸山運動公園も目前だ。
沿道にも沢山の人が居て応援をしてくれているため嬉しくなり、思わず笑みを浮かべつつ右手を挙げて声援に答えた。


これぞレースの醍醐味というものだろう。
そのままコースは陸上競技場のトラックへと続き、ゴールテープを切った。


記録は1:14:45。
偶然にも3週間前に軽井沢ハーフマラソンを快走した際のタイムと全く同じだった。
どちらもやや抑え気味で走ったこともあり、走ることそのものを楽しみながら走れたし、比較的余裕を残して走り終えられたのはダメージの観点でも良かったと思う。


順位は40歳以上男子部門で1位(優勝)、男子総合でも3位に入ることができた。
1位71分台、2位72分台、3位74分台と綺麗にタイムが分かれたところも面白かったと思う。
その後は1分以上選手が来なかったので、上記の3人で芝生に座り少しの間談笑した。
なお優勝は三宅選手(連覇)、2位に入った田野選手は開催地である美瑛町の選手だったようだ。


さて、行きたかったトイレを済ませてから暫く待っていると表彰式が開催された。
こちらは表彰台の風景。
O氏に撮影してもらった。


こちらはトロフィーを持った姿での記念写真。


総合と言っても総合部門というカテゴリーは存在せず、4部門(男女別/40歳未満または40歳以上)で順位が付くので、同等に優勝扱いとなる。
そのため、優勝賞品としてトロフィーのほか、金メダル、小さなガラスのオベリスクのようなものから副賞として美瑛米(ななつぼし)10kgも頂いた。(持ち帰れないため、後程宅急便で自宅へと送付したのは言うまでもない)


表彰状には鮮やかな美瑛の風景が背景に印刷されていた。


これで今シーズンのロードレースも全て終了。
失敗レースとなってしまった初戦の諏訪湖マラソンを除くと、10レース全てで入賞以上、うち総合優勝5回、総合3位1回、部門優勝2回(総合でも3番手と4番手)、部門2位1回、部門3位1回と、高い水準で結果を残すことができたのは素直に喜びたいと思う。


レースの後は腹ごしらえということで昼食を取ることに。
北海道のグルメの1つと言えば豚丼ということで、近くの食堂、炭焼き はなび にお邪魔し、豚丼(肉増し)を注文した。
こちらが勝利の豚丼だ。


この後は、上述の通りヤマト運輸の美瑛町営業所にて優勝賞品のお米(10kg)を自宅宛に発送し、再び丘をドライブしながら時折(O氏が)撮影を楽しみつつ、北海道を後にした。
美しい風景を堪能し、撮影もでき、ロードレースでも良い結果を出すことができたので、総じて良い旅だったと思う。
3時起きで1日中撮影をした翌日にどの程度ハーフマラソンをしっかり走れるかは若干疑問だったが、意外と問題無く走れることが分かったのも収穫だ。


さて、次のロードレースについては未定だが、10月のシーズン入りを前に9月下旬辺りで1度、練習の一環としてどこかの大会に出走してみたいと考えている。(プレシーズンマッチとでも称することにしよう)
まずは7月上旬に1週間程急速が入るのでそこで疲労を取ることが重要。
そして夏、特に8月~9月の走り込みをしっかりと熟せるかが、10月以降のレースシーズンで快走できるかどうかのキーになってくるため、真剣に取り組みたい。


最後に、家族を始め今回も応援してくれた全ての人に感謝し、筆を置きたいと思う。

ありがとうございました。