2025/2/9 2025 たてばやしシャトルマラソン



『いやー、きつい。これはこれは、上州のからっ風とはかなりの難敵だな。』


立春を過ぎ、所によりちらほらと梅が咲き始めた頃、群馬県の館林市を訪れた。
暦の上では春が始まったとはいえ今季最強の寒波が到来したこともあり、居住している関東地方南部でも最低気温はマイナスへと突入。
レース開始時の予想気温も5~6℃と冷え込みが想定されていた。
なお、先月の下野市のレースの引き続き、こちらも片道2時間以内の距離のため、自家用車で日帰りでの訪問となる。


起床時刻は午前5時30分頃。
そこからはリンゴを食べた後、いつも通りインナーマッスルを刺激する軽いトレーニングを実施し、着替えを済ませる。
カーテンを開けて外に目を向けると、本日も気持ちの良い快晴の空が広がっていた。
朝の冷込みは厳しそうだが気温の上昇も期待できる。
ただ、この時期の群馬県は赤城山から吹き下ろされる北西の強風、俗に言う【上州のからっ風】が難敵となることが多い。
故に、あとは風次第と言うところだろう。
ユニフォームやシューズなどは事前にパッキングしておいているため、これらを手や背中に6時半前に玄関を出て、自宅の扉に鍵を掛ける。
家の辺りの風は殆どなかったが、直線距離でも数十キロは軽く離れているので、あまり当てにはなるまい。


一般道路から高速道路へと乗り継いで、一路埼玉県方面へと北上する。
事故や渋滞もなく快適かつ順調に進み、最寄りの館林ICを通過、今回のレースコースとなる城沼の南部に位置する館林市立つつじが岡公園へと到着した。
駐車場は既に満車に近い混雑だったが、幾つかの停車スペースは確認できたので、そのうちの1つに駐車。
こちらの大会は受付を済ませる必要があるため、そのままダノン城沼アリーナのレセプションへと足を運ぶことに。
下の写真に写る大きな建物の1階に、種目毎の受付窓口が設けられていた。


受付にて参加賞(館林うどん)やハンドタオル、大会パンフレットなどが入った封筒を受け取り、再び車へ。
この時点で時刻は8時半過ぎ。
8時30分迄の受付に間に合わせるために駐車場には8時過ぎには到着したが、レース開始は9時50分のため未だ時間がある。
そのため、周囲を少し散策することにした。
折角なので城沼を観に行ってみることに。
後ほど周囲を走ることにはなるのだが、レース中だと余裕を持って眺められない可能性もあるためだ。(ハーフマラソンならまだしも、本日は10kmということもあるので)
こちらが近くの尾曳橋から眺めた城沼。


ほぼ全景を望むことができる。
風はと言うと、かなり強い。
4-5mはあるだろうか。
関東南部に居住する身としては、普段は感じることが少ない中々の強風である。


さて、レース開始も刻々と近付いてきたので、着替えを済ませてアップをすることに。
今回は気温も低く風もあり中々に寒いため、温かい服で居る期間をギリギリ迄引き延ばして、9時20分過ぎから淡々と走り始める。
柔軟等は自宅で済ませてきているので、走る前にか軽く実施しておいた。


スタート10分前となりコールが掛かったので、城沼陸上競技場(つつじが丘公園内)へと足を運ぶ。
自分より先には、見るからに速そうな若いランナー(結果的に彼が総合1位だった)が既に最前列に構えていたが、他には未だコース上には誰もいなく、少しずつ集まり始めてきているところだった。
まずは彼の後ろからスタートしてみよう。
彼は恐らく最初から飛ばして行くだろうから、その後ろに付けば号砲直後の混雑からは少なくとも抜けられるためだ。
周囲を見渡すと、高校生から中年以上の選手達まで、沢山のランナー達がこちらへ向けて歩いてくる。
中には、事前に注目していた尾崎勝海さんの姿もあった。
当時は不調に陥っていたとは言え、昨年3月の上里町乾武マラソンで完敗した、同じ40歳代の選手である。
この方とはもう一度一緒に走ってみたいと思っていたので、そう言った意味でも楽しみなレースでもあった。
レース開始時刻が近付くに連れ、長閑に会話を重ねていた周囲の10代から20代の選手達の声も静かになっていった。


パーン!


青空に乾いた銃声が鳴り響く。
直ぐ前の選手が駆け出すとともに、少し間隔を空けて後ろに付いてみることにした。
かなり速いペースだ。
スタートラインからは競技場を半周するのだが、コーナーを曲がる間に離されてしまい、そこに高校生などの若い選手達が入り込んでくる。
その集団に混じり、先ほど彼らが話をしていたスダさん(この時点では漢字を知らない)の姿もあった。
この展開の場合、まずはこちらのスダさんをペースメーカーとして付いて行ってみようか。
何処まで付けるかは分からないが。


競技場を出て公園の中のカーブやコーナーを幾つか抜け、城沼の西の端に架かる尾曳橋の下を潜って進む。
その先は城沼の脇を走るのかなと思ったら、梅林の南側の散歩道を走るコースとなっていた。
城沼沿いへはこの先で折り返し、2km地点のポイント辺りで出ることになるようだ。
梅林の真ん中手前で最初の1kmへと至る。
この1kmは3:13。
中々に速いペースなので、ここから落ち着いて来るだろう。


大徒渉池を右目に駆け、子供が遊ぶ芝滑り場を左手にカーブを切り、管理事務所の脇を抜ける。
そのまま2km地点へと続くUターンへと近付いていくが、少し速度が落ちているのか後ろから2、3人のランナーの足音が聞こえてきた。
うち2人が横に並ぶ。
直ぐに抜いて行きそうな気配は無さそうだ。
そのまま大集団となり、花バス遊覧船の乗り場前を大きく左に曲がると、このコーナーの立ち上がりで集団から1人が抜け出す。
だが、集団の前の方の選手達はこれに反応しようとはしなかった。
2km地点が過ぎる。
この1kmは3:23。
多少落ちたとは言え最初の1kmが速過ぎたことを考慮すると、良いペースに落ち着いたと言えよう。


城沼沿いに出て、先程通過した梅林の反対側へと至る。
この辺りに来ると集団が牽制をし始め、一気にペースが落ちて来た。
確かに道も広くはないが、ここまでスローな展開は少々不味いかもしれない。
先ほど追いついて来た選手達も遅過ぎると感じたのか、横に並んでくる。
時計に目を移すと現在のペースは3:40。
おおっと、落ち過ぎだ。


『少し早いが、ここは思い切って前に出るかな。』


と心に決めると、その後のS字コーナーを利用して大外から一気に集団の前方へと加速する。
これにスダさんともう1人の選手が反応。
その1人とは尾崎さんだった。
3km地点を通過。
後半はペースは上げたものの、この1kmは3:35まで落ちてしまった。
後半(城沼南岸を西に進む区間、6km地点辺りから8km地点手前辺り迄)は向かい風になることを考えると、前半(城沼北岸を東に進む区間、4km地点辺りから6km地点辺り迄)はペースを上げておかないといけないだろう。
できれば3:20は切っておきたいところだ。


3km過ぎの二の丸橋を渡って右にコーナーを曲がると、いよいよ城沼の東端に至る区間が始まる。
このセクションは途中で緩いカーブはあるが直線がメインだ。
直線に入ってペースを上げたスダさんに食らいついて行くように、こちらもギアを入れ替える。
が、速い。
流石は若手に噂されるだけのことはある。
後ろから見るにスダさんは、豊富な脚の回転数を活かしたケイデンス主体のランナーのようだ。
巷ではピッチ走法と言われるランニングスタイルである。
一般的には安定感があり、後半でもガクッと落ちることは少ないと言われている。
なるほど、どの程度持ち堪えられるか分からないが、付いて行ってみることにしよう。
ちなみに今の順位は4番手、部門では首位だ。
とは言うものの直ぐ後ろには尾崎さんも控えており、勝負と言う観点では気は抜けない。


4km地点を通過し、5km地点を過ぎるといよいよ視界の先には城沼東端地点のつつじ橋が見えてくる。
3kmから4km、4kmから5kmはそれぞれ3:19、3:17でカバーできていたが、段々とスダさんには話され始め、気付けば2、30m程の差が付いていた。
と同時に後ろを走っていた尾崎さんとも、徐々に差は広がっているようだった。(後ろは見ていないが足音から察するに、と言うところだ)
上げようと思えば上げられるのだが、後半区間を考慮するとこの辺りのスピードで巡行しておいた方が良いとも思える。
何より冬の群馬の北西の風を舐めたらいけない。
後半区間に温存しておかねば。


6km地点迄の1kmも3:16でカバーし、つつじ橋を渡ろうとすると、右の方から強い風が突然吹いてくる。
おおっと、と思いながら身体に少し力が入った。
これは締めて掛からないといけないな、と思いながら束の間の大通りに別れを告げ、城沼南岸の遊歩道へと足を踏み入れた。
この右方向へ曲がる時にたまたま後方が見えたのだが、尾崎さんとは既に2、30m程の差が付いているようだった。
しかし、前とも後ろとも勝負はここからだ。
それは自分よりも経験のある2人の方がよく分かっているとは思うけれども。


城沼の南岸を西へと進み、7km地点を目指す。
ここから暫くの間は西へと進むので想定通り向かい風が吹いてくるのだが、城沼の湖面の上を吹き抜けてくるのでこれがまた冷たい。
更に強弱混ざった中で、突風と言う程ではないものの行く手を阻むと喩えても良いようなものも時折あり、文字通り手強い的に行く手を阻まれている状況に陥った。


『いやー、きつい。これはこれは、上州のからっ風とはかなりの難敵だな。』


何とか耐え忍び7km地点を通過する。
ラップタイムは3:26。
一気に10秒も落ちてしまったが、止むなしだろう。


7km半ばを過ぎた辺りからは、再びつつじが岡公園内へとコースは延びていく。
この辺りになると沿道から声援を掛けてくれる方々も増えて賑やかになるのは嬉しかったが、生憎と難敵との闘いの後でもあったため、今回は応えている余裕は殆ど無い。
園内とは言え未だ時折向かい風にも吹かれるし、5km以上の距離をこのペースで走ったことが久々だったこともあり、中々に大変だった。
それでもペースを落とさずに耐えられるだけの余力は未だあるため、50m以上は離されてしまったスダさんの背中を懸命に追い掛けていると、8km地点を通過。
この1kmは3:27。
ペースとしては持ち堪えられていた。


8km地点半ば辺りから9km地点過ぎまでの1kmは、序盤に走ったコースと同じ部分を走ることになる。
時折カーブを挟むためスダさんの姿が見えたり見えなくなったりするため、距離が広がっているのかどうかは何とも言えないが、前を追い続けることが今すべきことでもある。
ここまで来ると流石に結構キツくなってきているため時折表情も歪むこともあったが、ペースを保つ位の力は残っていたので、脚に魂を込め、懸命に肩を旋回させる。
テニスコートを左手に抜け、9km地点を通過。
コースが9.8kmのため少し前に残り1kmの表示があったが、そこは気にせずラップタイムを確認する。
この1kmは3:25でカヴァーした。
上出来だろう。


9km地点先を左に大きく旋回して、城沼野球場の周囲を抜けて陸上競技場を目指す。
この間に子供達が声援をくれたので、左手を上げてこれに応じる。
この辺りまで来ると流石に風も気にならなくなり、レース終盤ともあって走りも楽になってきていた。
もはや前には誰も見えないし、後ろからも足音は響いてこない。
どちらも100m(このペースだと大凡20秒)以上は差が付いているだろう。
右手に陸上競技場のメインスタンドが見えてくる。
この先の噴水の広場の手前で折り返したら、いよいよゴールテープまで6、70mだ。
そのまま声援を受けつつUターンし、最後のストレートは右に左に手を振りつつ、フィニッシュラインを駆け抜けた。


記録は33:11。
順位は40代男子部門で優勝、総合でも4位だった。
最後は前とは30秒程、後ろとも25秒程付いたようだった。


レース後には前を走っていた須田さん(ここでリザルトとご対面し、ようやく漢字を知った)、および部門2番手でゴールした尾崎さんと少しお話をした。
尾崎さんとは、実は上里町のレースでご一緒していて、その時は5位入賞ではあったが尾崎さんには完敗したこと、今回は先着できたが、たまたまであったと思うことなどを交えて談笑することができ、良い交流の機会になったと思う。
この程度の差はコンディション次第で幾らでもひっくり返るだろうし、今回勝つことができたのも時の運だろう。
年代も近いし、また何処かのレースでお会いすることもなるだろうし、その時はまた胸をお借りしたい。


その後、暫くして表彰式を経た後に公園を後にした。
去り際に公園の入口付近で賞状と楯を両手に記念に1枚。


上州のからっ風に行く手を阻まれ苦戦を強いられたものの、振り返ってみれば実力を試す良い機会となるレースだったと思う。
ちなみに、受付の時に頂戴した参加賞はこちら。(帰宅後に自宅にて撮影)


また、部門1位入賞で頂戴した賞品はこちら、楯の背後に写っている館林うどんだ。
本大会のメインスポンサーにもなっている。


後日に開封。
館林うどんを製造している会社名も、株式会社館林うどんであるようだ。


箱を開けてみよう。


左側の束が8束、右側の袋麺が4袋入っていた。
休日の昼食や(曜日を問わず)夕食に、美味しくいただくとしよう。


さて、シーズン5戦目となる次のロードレースは、2週間後の2月23日に福島県いわき市で開催される、いわきサンシャインマラソン。
自分はフルマラソンは走らないため、ショート種目の1つである10kmに出走予定だ。
タイムはレース迄の仕上がり具合や当日のコンディションにもよるため具体的に何分をターゲットとは言えないが、34分台前半から半ばを1つの目安にし、いつも通り部門3位以内での入賞を狙い快走したいと思っている。


最後に、家族を始め今回も応援してくれた全ての人に感謝し、筆を置きたいと思う。

ありがとうございました。